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    “民族ナルシシズム”の文化(映画)政策に成果はない

     もう一昔以上も前、日本はイギリスの“ソフトパワー”文化産業政策に影響された“デジタル・コンテンツ”産業振興策を含む、“クール・ジャパン”なる文化政策を開始した。

     それと前後して、高齢の映画研究者や著名な漫画家も含む懇親会で“メディア芸術”なる支離滅裂な(と言って語弊があるなら、“非歴史的で曖昧模糊とした”と言ってもよい)概念が提示された。以来、この“メディア芸術”は文科省HPで公表されている毎年の予算編成の、“日本映画”とは別の特殊な大カテゴリーとして次第に予算枠を増やしてきた。

     この経緯について私は、拙著『映画 崩壊か再生か』の中で論理的かつ映画史・日本漫画史を踏まえて批判している。“典拠”や“根拠”を求める学究心のある方はお読み頂きたい。


     結局この政策はほとんど何の成果もないまま、そして、何のために“メディア芸術”概念が必要だったのか全く不明なまま、現在に至っている。はっきり言えば、“ジャパニメーションを世界に売ろう”という政府の目算は完全に当てが外れ、2000年代には政府が“メディア芸術”の枠から外して予算規模を減らした“日本映画”がますます世界に通用しなくなるという結果を生んだ。

     もっとも、私は日本映画が“世界に通用しなくなった”最大の原因は助成予算枠の削減ではないと思っている。

     主な原因は2つ考えられる。
    第一の原因は、論理も歴史も中途半端にしか尊重しない“短絡的”かつ感情的な姿勢である。
    第二の原因は、そのような人々が映画に関する言説を“統制”しようとする結果として生じる、若い世代の古典的教養と理論的思考に対する軽視である


     前者は、必然的に後者を生む。どこかで断ち切らなければ、この悪習は永久に継承される。

     日本人の、というよりも自民党的な、もっと端的に言えば安倍晋三に代表されるような、非歴史的で短絡的な思考様式が、まともな映画文化と映画産業の発展を阻害し、“メディア芸術”や“クール・ジャパン”といった内容空疎な“コンセプト”中心主義とでも呼べる文化政策が以前からあったその短絡思考をますます悪化させたのである。

     こうした内容空疎な概念を普及させようとする人々は、決まって“美的感性”や“伝統”によって理念や概念に代えようとする。概念の定義もやらず、歴史的な事実も検証しない。勿論、検証されるべき歴史の中には、映画や他の諸芸術に関する日本の言説が創作者や文化産業に与えた影響も含まれる。そういう検証もなしに、短絡的に“日本の美”、“クール・ジャパン”が登場するわけである。

     最近では、津川雅彦のような独断的な“業界人”が、「日本の美」“ソフトパワー”輸出のための戦略懇親会(名称は正確には覚えていないが、主旨はそうであろう)の座長を務めるそうである。
     津川氏は“映画は娯楽なんだよ。アート映画に市場なんかない”と断言し、“日本映画は韓国映画にも、インド映画にもイラン映画にも(いつの話だろうか)負けている”とあるインタヴューで語っている。しかし、ちゃんと統計的な数字を調べたうえでそう言っているとは思えない。ましてや、日本映画の「劣勢」の理由が“アート映画に市場があると思い込んでいる馬鹿な監督が多い”せいだと断言するに至っては、その専制的な言説はスターリン並みである。

     最近の韓国映画は確かによくできている。だが、最近のハリウッド映画は決して1980~90年代よりも良質な作品は生んでいない。この両国の映画は、本質的には全く違う要因によって“世界の市場で通用”しているのだ
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    「レンフィルム」民営化で経営破綻の回避は可能か?

     サンクト・ペテルブルクの由緒ある映画スタジオ「レンフィルム」の名前は、90年代前半に西欧の映画祭で特集が組まれた後で日本でも特集上映が行われたことで「作家映画」のファンには知られていたが、私の会社でDVDを配給している「ロシア版ホームズ」やそのガイドブック『ロシア版ホームズ完全読解』を通じて一般映画ファンにも広く(?)知られるようになっている。

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     「レンフィルム」はソ連時代には国内第二の規模を誇り、劇場公開用作品もテレビドラマも毎年コンスタントに製作していた。ソ連最大の「モスフィルム」と同様、1950年代後半以降には娯楽映画の製作にも力を入れていた。60年代最大のヒット作『両棲人間』(62)やペレストロイカ時代のヒット作メロドラマ『冬のチェリー』(85)等、日本でも何らかの形で上映或いは放映された作品もある。「ロシア版ホームズ」連作も、テレビ放映用ながら長編劇映画の体裁をとっており、最盛期「レンフィルム」の職人的技術の高さを証明する作品である。
     
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     その「レンフィルム」が、ここ数年間、経営破綻の危機に瀕しており、その対策としての改組の方法をめぐってスタジオ内部でも意見が対立してきた。このスタジオの経営難は1990年代初頭から始まっている。その頃までにソ連時代の職員の大半は解雇されており、ペレストロイカ以前に「創作班」と呼ばれていたスタジオ内ユニットは、独立した会社として活動し始めていた。
     しかし、それらの法人の社長となった「創作班」の元班長には、厳しい市場経済での経験は乏しかった。しかもソ連解体前後に全国的な映画の配給網が崩壊したために、海外に何らかの形でコネクションを持ち、しかも過去の作品にテレビ放映やソフト化による収入が見込めるような場合にしか、「創作班」を基盤にした会社は経営を維持できなかった。「ロシア版ホームズ」連作の監督イーゴリ・マスレンニコフが「テレビ放映用映画創作班」を改組して作った会社「トロイツキー・モスト」を維持できたのは、彼自身がその二つの条件を満たせたからにすぎない。「大」レンフィルムも会社として存続したが、こちらは国の助成を受けて合作映画や作家映画をわずかに製作するだけで、経済的自立は果たせなかった。

     一方、「レンフィルム」でデビューし、ペレストロイカ時代に欧米の映画祭で評価された「作家映画」の監督達(アレクサンドル・ソクーロフ、コンスタンチン・ロプシャンスキー)は、自ら会社経営に乗り出すことはせず、映画官僚で元スタジオ所長のアレクサンドル・ゴルトゥヴァの厚意により国家からの僅かな助成金を受け、海外の合作相手と組むことで、なんとか創作を続けた。彼らほどの名声を得られなかったアレクサンドル・ロゴシキンは、コメディ―映画『民族的な狩りの特色』(95)では完全に作家映画を捨てたように見えた。この作品も国からの助成金に頼った「レンフィルム」の製作である。大衆向けコメディー映画という選択は、ロシア全体の劇場公開映画製作本数が最低水準に落ち込んだ時期の、窮余の策だったと思われる。

     大スタジオが製作活動が収益を得られなくなった時に収入源として当てにできるのは、過去の遺産つまり旧作のコレクションだけである。「ロシア版ホームズ」連作で助監督を務め、ペレストロイカ時代に監督となったヴィクトル・セルゲーエフ(1938-2006)は1997年から2002年まで「レンフィルム」所長を務め、ソクーロフの『モレク神』や『牡牛座―レーニンの肖像』をプロデュースする一方で、98年にはスタジオの旧作コレクションの権利を2008年までの期限付きで「メディア・モスト」に売却している。「メディア・モスト」は新興財閥ウラジーミル・グシンスキーの設立した会社であり、グシンスキーは民放テレビNTVを設立して映画製作も行うなど、当時の映像メディア業界全般に勢力を持っていた。プーチン政権の成立に伴う彼の亡命後、2001年に「メディ・モスト」は解散したが、「レンフィルム」の旧作群を今度は国家が買い取った。国営の映画アーカイヴ「ゴスフィルモフォンド」がそれら旧作映画の権利を引き継ぎ、スタジオの収入源にはならなかったのである。
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    世代間格差と日本の文化政策・文化水準

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    プロフィール

    Shusei Nishi

    Author:Shusei Nishi
    私の専門は映画であり、映画と音楽には相違点も勿論ありますが、多くの共通点もあります。個人的には、映画は現在の形よりもっと音楽的であっていいのではないかと考えています。

    ここでは批評やレヴューというほどではなく、偏愛する音楽と映画、そして生活全般における“別の選択”について書いてゆきます。

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