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    マスコミの報道しない現代ロシアの政治・経済

     現代ロシアの政治や経済について、日本のマスコミはほとんど報道しない。ロシアに限らずEUや中国に関してもそのことは言える。
     CNNやブルームバーグのような英語圏のソースを部分的に引用したり翻訳する程度では、実際のところは何も分からない。例えば、10年以上前のモスクワにおける集合住宅爆破事件とその後のA.リトヴィネンコ暗殺事件もしかり、今話題のエドワード・スノーデン氏の逃亡に対する中国やロシアの対応もしかりである。どちらも英米のソースではロシアや中国の当局批判が強調されているが、事実の検証が全く足りない。

     リトヴィネンコに関しては、以前も指摘したように、彼が共著者として刊行したFSBの「暴露本」には注記が全くなく、信憑性に乏しいことを指摘する人々もいる(詳細は以下の英語版ウィキペディアを参照。http://en.wikipedia.org/wiki/Blowing_Up_Russia:_Terror_from_Within))。
     研究者だけでなくジャーナリストでも、まっとうな本であれば参考文献や情報源を注で示すのが普通だ。にもかからず当時、主要なマスコミでリトヴィネンコの証言に疑いを示したものはなかった。

     英米、とひと括りにしたのは、この両国が事実上、利害関係と機密情報を共有しているからだ。前者は主にロスチャイルドやロックフェラー系の大銀行による金融市場や金価格の操作に伴うものであり、後者はテロ対策というよりもむしろ国内外の目を欺いて国際政治における勢力を維持しつつ、地域紛争や通貨戦争による利権を確保するためのものだ。要するに、全て権力の維持と拡大のためである。

     ところで、彼らが2000年代前半に独裁者のように見なしたウラジーミル・プーチンとは、実際にはどんな人間なのだろうか? 彼がFSB出身者であることから、マスコミは最初、ソ連時代の言論統制やスターリン的な強権政治になるだろうと想像した。だが、2000年代半ばまでには、そうではないことが分かってきた。ロシア経済はある程度の復興を実現し、映画を始めとする文化面でも“グローバル”市場を意識したものが目立ってきた。"BRICs"への投資が民間証券会社でも推奨されるようになり、日本のマスコミはその動向に追随した。

     英米の支配層がプーチンに脅威を感じた理由はおそらく、彼が明確にロシアの経済的“独自路線”を打ち出したことだ。エリツィン政権時代の1990年代には英米の支配層(金融資本家すなわち大銀行や多国籍大企業)にとってロシアという市場はもう少し「うま味」があったようなのだ。オリガルヒとリベラル派の政治家達はロシア国民の生活や国益よりも自分達の利益を優先し、ロシアの産業セクターの多くが壊滅的な打撃を受けた。生活必需品だけでなく他の製品も輸入依存率が高まり、ルーブルの信用は下落して、ビジネスでの大きな支払いはドル決済が増えた。
     90年代の政治や経済の混乱はロシアを「第三世界」のようにしてしまったが、都市部の消費意欲はそれなりに高く、経済復興が進めば需要の拡大は予想された。ロシアが(或いは中国その他が)英米支配層の許容する範囲内で経済成長している限り、彼らはアメリカやEUの経済が停滞しても儲け続けることができる。そのための国際的な取り決めがWTOであったりする。 
     
     2000年代におけるプーチン政権は、リベラル派を残しながらも、資源(主に化石燃料)輸出に関しては断固たる態度を採った。現在、国民からの支持率は高い。以下の動画は、彼が主導して2011年に結成された「全ロシア人民戦線」の大会の模様である。

     だが、ロシア国民の中にはプーチン政権を批判する人々もいる。所得格差は依然として大きく、また全般的に見てもロシアの経済成長は鈍化している。経済学者ミハイル・ハージンによれば、プーチンは権力志向ではなく金銭志向の人間であって、金銭を通じてしか権力というものを理解できない。スターリンとは対極にある人物であり、だから「リベラル派」の官僚を採用するのだという。金銭への執着があるのではなく、金銭というフィルターを通してしか世界を見ることができないのだと。
     
     ハージンの評価が正しいとしても、不可解なのは「全ロシア人民戦線」の結成意図である(そのことはハージンも認めている)。ソクーロフが、プーチンには分からない部分が多く、(エリツィンと違って)自分の映画の主人公にはならないと言っていたことも想起される。ハージンはまた、プーチンは「経済成長」の保証を求めており、それを与えられるのは「リベラル派」だけだが、実際には彼らの示す「成長」とは数字の操作でしかなく実体を反映していないとも言う。
     以下の動画は、ハージン他、独立系(私はそう考えているだが)の経済学者2人が参加した経済シンポジウムの模様である。ロシアだけでなく、アメリカを含む世界経済にも触れているのでロシア語の分かる方は参考になさるとよい。

     いずれにせよ、ロシアという国を単純に「共産主義」「全体主義」と結び付けることが、もはや無意味であることは明らかである。また、プーチン政権を単純に「独裁」や「強権」の概念と結び付けることもできない。

     彼は明らかに政治家として、おそらくは自己愛的な動機から「国民の支持」を求めており(さもなければ与党「統一ロシア」に所属する彼が「人民戦線」を結成する意味はない)、国益に敏感でもあって、決して他国への経済的・政治的な従属は望んでいない。

     一方、「リベラル派」にとっては自分の利益だけが問題であり、国益や国民の支持などはどうでもよいことである。彼らは、アメリカの例にならって金融制度を改悪するなり、日本の財政投融資のように「裏予算」を組むなりして、利権を確保できるからだ。金銭というフィルターを通して世界を見ることが、「資本主義的」世界観を持つことであるとするなら、プーチンは完全に資本主義的な為政者だと言えるだろう。だが、「人民戦線」を結成した動機が国民からの支持を得たいという自己愛であるとすれば、人間として欠点こそあれ、政治家としてまっとうな政治を行える可能性は残っている。自己愛それ自体は、「自分自身を愛するように他者も愛しなさい」という聖書の戒律と矛盾するわけではないからだ。
     
     
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    テーマ : 国際経済
    ジャンル : 政治・経済

    キプロス金融危機とロシアの地域経済統合への動き

     次の3つの動画は、Youtubeにアップロードされているロシア語圏の経済関連番組である。

    最初のものは2011年にウクライナのテレビで放映されたテレビ番組で、同地で開催された国際会議に出席したロシアの専門家達の鼎談である。2000年代初頭に世界同時不況を予測したという1964年生まれの経済学者・ジャーナリスト、ミハイル・ハージン、1968年生まれの経済学者でグローバリズム問題研究所所長ミハイル・デリャーギンが参加している。彼らは、経済的な観点からも文化的な観点からも、ウクライナがロシアをパートナーとせざるを得ないという点で意見が一致している(文化について補足すれば、歴史的にはロシア文化はキエフ公国すなわち現在のウクライナが発祥の地だと言える)。

     
     次の動画は、最近のキプロス金融危機とロシア中央銀行の新総裁選出に関して、プーチン大統領の地域経済統合問題に関する顧問、経済学者セルゲイ・グラジエフが答えているニュース。ロシアの投資家が資金を海外に預金しても何の得にもならないこと、ロシアに海外からの資金を呼びこむには金融制度の整備が急務であることを強調している。


     最後の動画は、ウクライナが今後も存続するためには、ロシア向け製品を輸出するしかないというハージンのコメントが中心である。その根拠として、10年後にはEUは破綻しているであろうこと、南方のトルコは既に他地域との貿易が多く、価格や品目の点でもウクライナから輸出できる商品は何もないということである。また、ロシア正教という文化的な共通性にも触れている。
     ちなみに、彼はある番組で「西欧社会では宗教は何の役割も果たしていない」とも語っているが、モスクワ大学を統計学で卒業し90年代には政府の経済関係機関の研究員でもあった彼のような人間がそうした発言をするところに、ロシアという国の文化的特質が反映している。「パンのみにて生きるにあらず」なのだ。もっとも、ハージン自身はどうやらユダヤ系らしい。

     海外からの政治経済ニュースというと、日本人はどうしてもロイターやCNN、BBC等、英語圏のソースに頼りがちになる。彼らが不偏不党だという保証はどこにもない。勿論、アルジャジーラであろうがノーヴォスチ通信であろうが最初から客観的であるとして鵜呑みにするわけにはいかない。
     それぞれのニュースを発信している地域には、それぞれの地政学的な背景や文化的背景がある。価値観も同じではないから、観点が違っているのが当然である。「グローバリズム」の本質は、そうした差異を単一のスタンダードを押しつけることによって徐々に消滅させ、一握りの巨大多国籍企業と金融資本が全世界の市場を支配しようとする動きである。その際に各国の中小企業や個人事業主が犠牲になったり環境や文化的伝統が破壊されても、グローバル経済の巨人達は良心の痛みなど全く感じない。TPPもその同じ鎖の一部なのだ。
     地域の経済・環境・文化の持続的な発展のために「グローバル市場」の限りなく画一化する動きに対しての抵抗が必要だという点では、ウクライナもロシアも日本も、課題は共通である。
     

    テーマ : 政治・経済・時事問題
    ジャンル : 政治・経済

    ロシアのチェルノブイリ関連番組と被曝の現実

     現在の高速化したインターネット環境では、文字や音声よりも動画を探した方が、あるテーマに関して未知だった情報を短時間に得ることができる場合が多い。少なくとも、ロシアの報道やインタヴュー番組に関してはそう言える。

     著作権者が自分で公表している場合もあるそれらの動画は、日本やイギリス等のテレビ番組と比べて作りが違うわけではない。テレビというメディアに特有の、取材にかける時間や予算の制約もある。ただ、ロシア特有のテーマや取材対象に関しては、やはり踏み込み方が違い、情報量も圧倒的に多い。

     例えば、チェルノブイリ原発事故の後、モスクワから現場近くに飛んで一定期間、除染作業の指揮を執っていた科学者に、その後どのような症状がいつごろから出たのかといった情報である。この科学者の名前はヴァレーリー・レガソフといい、専門は化学だがチェルノブイリ原発事故に関してウィーンのIAEA会議で報告を行い、何とかソ連の体面を保った人物である。彼は、もちろん危険は承知の上であろうが、事故後の3ヵ月間、事故現場の除染作業の指揮をしたという。彼ほどの高官レヴェルの科学者にしては異例のことだった。

     レガソフは、もちろん自らヘリコプターで原子炉の上に砂を投下したり、建屋に散乱した黒鉛を片付けたわけではない。防護服も着けていたはずだ。
     稼働して数年しか経っていないチェルノブイリ原発4号炉の爆発によって放出された放射能の量は、数十年稼働し続けた挙句に4基もの原子炉が破壊された福島第一原発事故の場合よりも、少なかったと考えるべきだろう。
     しかし、それでもレガソフは、事故から1年以内に癌に罹っている。体力が弱まり、睡眠不足に悩まされるようにもなっていた。これは黒鉛を除去したり砂を投下して数週間後に亡くなった作業員達の場合と違って、急性の外部被曝ではなく、内部被曝の結果である。

     日本のネット上ではよく、内部被曝の場合は発病に数年かかるという意見がみられる。それは本当だろうか? 急性の外部被曝は、被害者の外見をたちまちのうちに変える。数週間で手足の皮膚が靴下のようにはがれ、ひどい場合には病院に運び込まれてから妻が面会に来ても「彼はもう原子炉のようなものだから触ってはいけない」と注意されるほど汚染され、妻の目の前で内臓を口から吐き出しながら死んでいった男性もいるのである。

     レガソフは、国際舞台でソ連の威信を保つための報告を任されたほどの人間だったから、被曝対策はそれなりにしていたはずで、本人の希望がなければ3ヵ月も現場の指揮を執る必要もなかった。その3ヵ月の間に、主に呼吸や飲食を通じて体内に入った放射性物質が、彼の肉体を内部から蝕んだのだ。

     ここで私が書いた情報は、2004年にロシアで放映された30分枠番組のアーカイヴから得たものである。番組のタイトルは、確か「ヴァレーリー・レガソフの死の秘密」というものだった。ロシア語の分かる方は、この動画を検索することもできるだろう。タイトルを直訳してヤンデックスで調べればよい。ちなみに、彼はまだソ連が解体する前に自宅で首をつっているのを発見されたが、本当に自殺だったかは不明である。

     昨年、「食べて応援」キャンペーンに踊らされ、自分でもおそらくそれを信じきって被害県の農作物や魚介類を食べた民放テレビのキャスターがいたが、彼が年末を待たずに白血病になったことをご記憶の方もいるだろう。
     内部被曝には食物連鎖による放射能の生物濃縮も関係してくるので、魚介類等を食べれば3ヵ月間現場近くで空気を吸っていた科学者と同程度の被曝をうける可能性があるのではないだろうか。
     「内部被曝の場合は早くとも数年後にしか発病しない」というのは、一体どれだけのデータに基づく「常識」なのだろうか?
    プロフィール

    Shusei Nishi

    Author:Shusei Nishi
    私の専門は映画であり、映画と音楽には相違点も勿論ありますが、多くの共通点もあります。個人的には、映画は現在の形よりもっと音楽的であっていいのではないかと考えています。

    ここでは批評やレヴューというほどではなく、偏愛する音楽と映画、そして生活全般における“別の選択”について書いてゆきます。

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