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    映画文化の「二重システム」化 ―21世紀の展望③

    映画文化2.0がもたらす新しい視点と美学

     私の予想では、それは文学よりも「ジャーナリズム」と呼ばれている領域に変革をもたらし得る。ジャーナリストは、これまでよりも映像資料の読解や解説に多くの時間を割くようになるだろう。そう考える理由は、映画文化2.0では、映像や音の、資料、データ、記号としての性格が強く意識されてゆくと思われるからである。世界中でプロやアマチュアによってヴィデオカメラや携帯電話で、或いは様々な無人観測装置や監視カメラで記録され続けている映像は、かつて人々が備忘録や写真用カメラで記録してきたよりも遥かに多くの情報を、同時代人に提供し、後世に残すことになる。その映像資料の最大の保管所がインターネットである 。
     
     かつて映画文化1.0は、シネマトグラフと映画館の暗闇という魔術的体験をもたらす装置と、近代西欧における宗教の代替物としての芸術の概念とから出発し、あくまで映画というメディアの「オーラ」に固執し続けた。映画文化2.0では、画質の経年劣化、既成の映像や音声の二次使用、スタイルの混合や既存作品のパロディーといった、1.0の敬虔な信奉者にとって長らくマイナスの価値や例外を意味したものが、創造の基盤となる。それは、1.0で過剰に称揚された作家的個性を、限りなく匿名に近い謙虚なものに変えると共に、作品の構成に対する数学的或いは音楽的な感受性を培うものになる。
     
     映画文化1.0が、後期ロマン主義の音楽やワーグナーのオペラのように、豊穣なテクスチュアと複雑な旋律(映画ではプロット)、そして時間的・空間的な大規模化を目指していたとするなら、2.0はJ.S.バッハに代表されるバロック音楽のように、ミニマルで多くの場合匿名的な素材を数学的な緻密さで組み合わせ、短時間で大量の「情報」を伝達することを目指すだろう。そこには独自の象徴主義や新しいジャンルが現れるかもしれないし、1.0では周辺的でしかなかった表現や鑑賞の傾向が優勢になるかもしれない。1.0と2.0とは、お互いの持たない要素を保持しつつ、相互に影響し合うようになると思われる。その兆候は既に見られる。映画文化の二重システム時代は既に始まっているのである。

     
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    Shusei Nishi

    Author:Shusei Nishi
    私の専門は映画であり、映画と音楽には相違点も勿論ありますが、多くの共通点もあります。個人的には、映画は現在の形よりもっと音楽的であっていいのではないかと考えています。

    ここでは批評やレヴューというほどではなく、偏愛する音楽と映画、そして生活全般における“別の選択”について書いてゆきます。

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