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    情報戦の逆説: 陰謀は“陰謀論”に実現を助けられる

    1920年代後半、アドルフ・ヒトラーが政権に就く以前からドイツの再軍備化は始まっていた。そのための経済的な条件を整えたのは、実は米国の金融資本家である。そこには“不幸な偶然”では片付けることのできない計画的な利潤追求の意志が働いていた。アメリカの現代史研究者アンソニー・サットンは、既に1976年の著書『ウォール街とヒトラーの登場』(Wall Street & the Rise of Hitler)の中でそのことを指摘している。

     アメリカにおける“陰謀論”、特に連邦準備制度の事実上の支配者である大銀行家達による陰謀に言及した文献は、サットンの本が最初ではない。1966年には歴史学者キャロル・クイグリーによる『悲劇と希望』(Tragedy and Hope)が刊行されており、実はこの本がその後のアメリカにおける様々な“陰謀論”(Conspiracy Theory)に影響を与えている。 


    サットンもクイグリーも所謂“陰謀論者”ではない。前者は60年代末~70年代初めに保守系シンクタンク“フーヴァー研究所”の研究員であったし、クイグリーの方は大学で長年教えていた歴史学者である(ちなみに、クイグリーの教え子にはビル・クリントンもいる)。 
     1966年に初版が刊行されたクイグリーの『悲劇と希望』はその後、再版もされず、ご覧のような中古本が高値で取引されているようである。もっとも、最近ではInternet ArchiveでPDF版等がダウンロードできるようになっているので、興味のある人はそれを利用するのもよいだろう(URLはこの記事の末尾)。

     『悲劇と希望』が、著者の生きた時代の政治的状況による制約を受けている事は明白である。それは例えば、ロシアの19世紀を概観した部分に顕著である。クイグリーは、帝政時代末期のロシアが西欧諸国に技術・産業面で依存していただけでなく、国民の生活水準を向上させずに農産物を主に輸出に回していたという否定的な事実を指摘しながら、ロシアがそのような政策を採るに至った経緯も原因も述べずに、その後すぐにロシアの政治思想の大雑把な総括を行っている。“ロシア思想の基本的特徴は過激主義にある”と断定する彼の言葉は、明らかに冷戦時代のイデオロギーを反映している。彼は、個人の自由を尊重する“西洋”に対して、非合理的で全体主義的なロシアという、当時の紋切り型の構図を示しているだけなのである。
     
     しかし実は、19世紀後半のロシアの政治的支配層は、クイグリーが素描しているほど愚かでも貪欲でもなかった。工業化が西欧諸国に比べて遅れていたことは事実だが、皇帝アレクサンドル2世は有名な農奴解放以外に」教育改革や司法改革等を行ってロシアの近代化を進めようとした。その結果、都市部に限ってみれば19世紀最後の四半世紀にロシアが同時代の西欧諸国と比べて見劣りのしない近代国家の様相を呈するに至ったことは事実である。だが、アレクサンドル2世が1960年代に行った諸々の“改革”の中には、必ずしも国益に沿わないものもあった。
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    Shusei Nishi

    Author:Shusei Nishi
    私の専門は映画であり、映画と音楽には相違点も勿論ありますが、多くの共通点もあります。個人的には、映画は現在の形よりもっと音楽的であっていいのではないかと考えています。

    ここでは批評やレヴューというほどではなく、偏愛する音楽と映画、そして生活全般における“別の選択”について書いてゆきます。

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