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    情報戦、“陰謀論”、スターリンの「第3の妻」: 世界システムの転換期と“普通人”の運命⑩

    情報戦と大衆文化 

     現代の「情報戦」(information warfare)は、主に大衆、一般市民(普通人)をターゲットとしている。従って、その「武器」としてはマスメディアが最も有効であって、補助的には“大衆文化”の一部も利用されている。
     
     例えば、実質的にアメリカの経済植民地であるフィリピンでは、冷戦終結後もまだ「敵国」であるロシアに対して、アメリカに登記された映像制作会社の作った映画やテレビドラマを用いてロシアのイメージ悪化を促しているという(次の動画を参照。日本語字幕はYouTubeの字幕機能で出る)。
     
     この政治家アントン・ロマノフ氏がフィリピンを初めて訪れた時、現地の人々はそれらの映像作品の影響によってロシア人をとても恐れ、「何もかも奪われる」と思い込んでいた。だが、ロマノフ氏が皮肉っぽくコメントしているように、彼らは既に果物の木一本に至るまでアメリカに「もう全て奪われている」のである。

     勿論、情報戦には相手国の政府や軍組織から情報を盗み取るといった、スパイ映画に描かれるような事柄も含まれている。だが、現代の戦争は核兵器の使用による文明の崩壊という現実的なリスクがあるために大国同士が衝突する世界大戦になる可能性が低く、情報を盗むといっても軍事力の優劣を競うよりも経済的な利権を確保する目的で行われることが多いと思われる(米NSAは実際に、他国の大企業の通信を盗聴していた)。この傾向を加速させたアメリカは、「エコノミック・ヒットマン」であるジョン・パーキンスがその自伝的な著書で書いているように、既に1960年代から「コーポレートクラシー」の体制に移行していた。現在、同国の実質的な支配者は、金融・経済界の大物達である。

     他国での経済的利権を確保するには、その国の「人心」を自国に引き付けるのが一番である。勿論、フィリピンの例に見られるような、「敵国」に対する誹謗中傷的な宣伝も欠かせない。しかし、ネトウヨのような知的に劣った人々やそのような人々が政権を取って情報統制を始めたウクライナのような国は例外として、世界の普通人達の多くは、もはや「国家」や「民族」の優劣を語るようなハードな“プロパガンダ”を受け入れなくなっている。そこで、国際的な影響力を持つ「通信社」という道具や、いわゆる「ソフトパワー」の力を借りることになる。
     この観点から現代のマスコミ報道や「陰謀論」的な著書を読むと、別の世界像が見えてくる。まず、ロイター(ロスチャイルド系)やウォール・ストリート・ジャーナルをソースとするマスコミ報道を鵜呑みにしてはいけないのは当然である。しかし、一見それに対抗しているように見える「陰謀論」的な文献も、長年に渡るアメリカの「ソフトパワー」の影響を受けていないとは限らないのである。

    学問的な検証を受けない“陰謀論”の危うさ

     「陰謀論」は、学問的な研究と違って必ずしも情報ソースを明示しない。たとえ参考文献を示す場合でも、商業的な効果を狙って学術的な引用、出典の表記はしないのが普通である(学術論文では、出典には書名、著者名の他、出版社名、発行年、参照ページも示さねばならない)。一般読者はそのような表記を「うざい」と感じる。だが、それらがなければソースの確認は不可能なのである。

     広瀬隆氏を「陰謀論」の著者だと言っては語弊があろう。実際、広瀬氏は、原発・原子力産業関連の啓蒙書やロスチャイルド家の系図に基づく権力構造の解明では、評価に値する仕事をしている。だが、氏の本にはしばしば出典が明示されていなかったり、信憑性の程度にばらつきがある文献を参照していたりするという欠点がある。そして、系図と人脈の分析による国際的な権力構造の解明という、氏が得意とする方法論自体、一歩間違えれば巷に流布する陰謀論と同様に独断という罠に落ちる危険性を帯びている。それが特に感じられたのが、『ロマノフ家の黄金』(ダイヤモンド社、1993年)である。この本でも、広瀬氏は系図学に基づくロシア貴族階級の権力構造の解明を行おうとしているのだが、所々で上記の欠点が目立つ。

     例えば、ヨシフ・スターリンの“3人目の妻”だったと言われるローザ・カガノーヴィチに関する記述である(39~40ページ)。スターリンの忠実な部下でモスクワの近代化に尽力したラーザリ・カガノーヴィチの妹だとされるこの人物は、最近の歴史学的な研究によって、実在しなかったことが判明している(ロシア語のソース http://www.infox.ru/science/past/2010/04/28/roza_kaganovich.phtml)。この記事で紹介されているアレクサンドラ・アルヒーポワ(ロシア国立人文大学とブレーメン大学で準博士号を取得)のフランス=ロシア人文・社会学センターでの報告(モスクワ、2010年4月27日)によれば、このローザ・カガノーヴィチなる人物には年齢的にも経歴の上でも、類似した“モデル”さえいなかった。最初にこの人物に言及したのは、1937年にソ連からフランスに政治亡命し、後にアメリカに移民したアレクサンドル・バルミンなる人物である。そして、戦後には、ニコライ・バヘシスなる亡命者(ドイツ、後にオーストリア国籍を取得)の著『スターリン』(1952)がローザ・カガノーヴィチについて書いたが、この人物はモスクワ生まれの経済学者・ジャーナリストだったという。
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    Shusei Nishi

    Author:Shusei Nishi
    私の専門は映画であり、映画と音楽には相違点も勿論ありますが、多くの共通点もあります。個人的には、映画は現在の形よりもっと音楽的であっていいのではないかと考えています。

    ここでは批評やレヴューというほどではなく、偏愛する音楽と映画、そして生活全般における“別の選択”について書いてゆきます。

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