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    伝統の継承について

     以前、リトアニアの文化に関する映画を作った際に、同地の民族楽器“カンクレス”の演奏を撮影させてもらったことがある。演奏したのは民族芸能グループ“アタリア”のメンバー、ゲディミナス・ジリスさんである。
     この“カンクレス”という楽器は、もともとリトアニア人が家族の葬送のために作ったものであると、同国の考古学者ヴァイトケヴィチュス氏が説明してくれた。人が死ぬと森へ行って木を切り、この楽器を作ったのだそうだ。
    (『リトアニア 神々の黄昏』というこの短編映画はDVD化されているので、関心のある方は次のネットショップでご購入ください Alt-arts Shop http://www.alt-arts.com/alt-shop/detail-00000013.html)

     実はこのカンクレスは、ソ連時代にほとんど誰も弾く人や作る人がいなくなり、消滅しかかったのだという。だが、1970年代から若い世代が博物館の展示品を研究しながら、復興させたそうなのだ。現在では、“アタリア”のようなフォーク・グループの人々が演奏しており、現代的にアレンジされたり創作された歌の伴奏にもなっている。
    atalyja.jpg
     
     その後、私はアイヌ民族の文化に関する映画の取材で、“トンコリ”という楽器のことを知った。この楽器も一時は消滅しかかっていたのを、若い世代が復興させたそうである。この楽器も木製で、どことなくカンクレスを連想させる。

     他のドキュメンタリー映画作家の場合は知らないが、私自身は、編集という作業に非常に時間と神経を使う。長期間に渡って取材すれば“真実”が得られるとは思っていない。芸術の真実は素材の取捨選択と構成の厳密さからしか生まれないのだから。
     そういう訳で、当初の構想どおりに撮影できなかった場合(ドキュメンタリーではむしろそれが普通だと思うが)、構成原理が見えないまま素材撮影の後、何年か過ぎることもある。外部から発注された企画でもなければ、素材の中から正しい構成原理が見えてくるまでは、無理に編集を続けない方が良いと考えている。
     
     アイヌ文化に関する映画は、最近ようやく編集のめどが立ち、結果的に35分の短編になった。まだ変更の可能性はあるが、ほとんど完成したと言っていい。木彫家の床ヌブリ氏と、木版画家で“アイヌ・アート・プロジェクト”代表の結城幸司のインタヴューが中心であり、福本昌二氏のトンコリ演奏が間奏曲のように入る。
    阿寒在住の木彫家、床ヌブリ氏
    この映画『甦るカムイの夜明け』(仮題)では、芸術文化における伝統の継承という問題が提示されている。
    芸術文化においては創造と伝統の継承という、部分的には相反する二つの要素が存在している。それらが互いを否定しあうのではなく、止揚するところに、芸術創造の秘密があると、私は考えている。
    ヌブリ氏の「神々の詩」を見る結城氏
    結城氏の木版画「神々の囁き」
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    Shusei Nishi

    Author:Shusei Nishi
    私の専門は映画であり、映画と音楽には相違点も勿論ありますが、多くの共通点もあります。個人的には、映画は現在の形よりもっと音楽的であっていいのではないかと考えています。

    ここでは批評やレヴューというほどではなく、偏愛する音楽と映画、そして生活全般における“別の選択”について書いてゆきます。

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